崩れた本の山の中から 草森紳一 蔵書整理プロジェクト

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

2010-01-01から1年間の記事一覧

蔵書をいったいどうするか(番外編7)十勝ブルーの空の下、本たちの物語は続く。

11月30日(火)も美しいお天気! ホテルの窓から見下ろす帯広の街のそこかしこに雪が残ってキラキラと輝いている。 8時半にホテルを出て、大学へ向かった。とにかく、北海道は広い。どこへ行くにも車は欠かせない。草森蔵書を寄贈した帯広大谷短期大学は、果…

蔵書をいったいどうするか(番外編6)刺激的でダイナミックな記念講演

さて、11月29日(月)草森記念資料室の開館日、4時から記念講演「真の知の巨人」が始まった。講師の椎根和さんはマガジンハウスの『hanako』『popeye』など数々の雑誌の編集長を務めた人。草森さんの友人でもあり、『荷風の永代橋』『中国文化大革命の大宣…

蔵書をいったいどうするか(番外編5)草森紳一記念資料室オープン。乾杯は十勝の牛乳で!

蔵書整理プロジェクトの私たち、いや草森さんは本当にラッキーな人! 待ちに待った記念室オープンは、故郷音更町の開町110年と帯広大谷短期大学50周年、それに大学内のオープンカレッジ開講10周年を記念する特別事業として実現した。そんな大切な節目の年に…

蔵書を一体どうするか(番外編4)いよいよ草森記念室が

なんとまあ、前回のブログは5月にアップして、それから約半年も経ってしまった。 今年は気温35度前後という異常な暑さの夏でしたが、みなさま、いかがお過ごしでしたか。 北海道も、まったく北海道らしくない暑さと湿度の夏だったとか。それでも、音更で…

NO MORE BOOKS! 14 音更の空気を吸って本達は体を伸ばした

約一年と四か月ぶりに寄稿させて頂きます、というのも、十月初旬にたった一泊ですが蔵書の寄贈先となった帯広大谷短期大学を訪問し、開館前の新しい図書室と、残りの本の新しい保管先となった廃校(東中音更小学校)の様子を一番乗りで見学してきました。 私…

蔵書をいったいどうするか(番外編3)それぞれの5月

草森さんのとても親しかった友人のひとり、ジャーナリストのばばこういちさんが4月9日に亡くなられた。 2008年6月の<草森紳一を偲ぶ会>のスピーチで、 「非常にぼくは腹が立っている。5歳も年下の男が、共に90歳になっても生きていこうと言っていたにもか…

電車にのって本屋さんへ行く

久しぶりに都会へ出る機会があったので、1週間ぶりに電車にのって池袋まで行って、本屋さんをのぞいてみました。目的はもちろん、草森紳一『文字の大陸 汚穢の都――明治人清国見聞録』(大修館書店)です。 といっても、買い求めようというわけではありませ…

蔵書をいったいどうするか(番外編2)副島種臣関連資料は、九州の佐賀へ

草森さんの大きなテーマの一つは、副島種臣(そえじまたねおみ)だった。佐賀出身の明治の政治家で、蒼海(そうかい)という号をもつ漢詩人で書家でもある。 1990年の3月、箱根の老舗旅館、松坂屋に行きたいという事で2人でお供。旅館の玄関を入ると、巨大…

730回の夜と朝

草森先生がお亡くなりになってから、まる2年。たった730回、夜と朝との交替を見送ってきただけとは思えない、濃密な時の流れでした。 夏の花火をともに見上げ、冬の寒さをともにしのいだ蔵書整理プロジェクトの仲間たちも、それぞれの生活へと戻っていきま…

十勝平原再訪記(後編)

本はなんのために存在しているのか? それはもちろん、読まれるためでしょう。どんなにいい素材を使って、美しく仕上げられた本でも、読まれなければ意味がない。別に隅々まで熟読して欲しいというわけではありません。だれかが開いてみて、なにかを感じ取っ…

十勝平原再訪記(前編)

そこでは、時間そのものが凍りついているかのようでした。 子どもたちの笑い声が毎日響いていたのは、もう20年ほども前のことになってしまったそうです。しかし、長い歳月に浸食されたような乱れは微塵も感じられず、かといって、在りし日の姿が昨日のことの…

星。

当方のさえない、地方での学校生活のなかで、とにかく感謝しているのが、その学校図書館の充実ぶりであった。なんたって、『共同研究 転向』(思想の科学研究会、全三巻、平凡社)、革装の三島由紀夫全集(新潮社)まで揃っていた。そして、真新しいピカソの…

隠された小さな秘密

草森先生が遺された蔵書の中には、スポーツに関する本が、かなりある。ざっと見積もっても、100冊以上。サッカーやテニス、そしてフィギュアスケートに関する本まで混じっているけれど、圧倒的に多いのは、野球に関する本だ。 ご本人が、少年時代、野球をや…

ログ。

あけましておめでとうございます。 旧年中はみなさま、ありがとうございました。 本年もどうか、よろしくお願い申し上げます。 当方、ブログという単語を聞いたときに、まず思い出したのがBCL(Broadcasting Listening)のログ、であった。ログ(log)の原…

その先は永代橋 白玉楼中の人