造本・印刷
永代橋のたもとの喫茶店で、コーヒーを飲みながらの打ち合わせが済んだら、近くのおでん屋さんに連れて行っていただいて軽く飲むのが、草森先生との間ではならわしとなっていた。ビール1本と、お酒を1、2杯、そして、おでんを少々。 そのあと、霊岸橋のた…
自宅で仕事をするようになって以来、電気代を少しでも節約したいので、仕事中はできる限り、エアコンのスイッチを入れないようにしている。暑い盛りでも、エアコンの使用は昼下がりの数時間にして、あとは窓を開けて、風を通してなんとかしのぐ。 もちろん、…
もう10年くらい前、ある出版社で漢和辞典の仕事をしていたころ、いつかプラスチックのケースに入った漢和辞典を作ってみたい、と考えたことがある。 透明なプラスチック・ケースの中に納める本体の表紙クロスは、たとえば、赤、青、緑の3色を用意する。本文…
本は紙でできている。当たり前のことだが、本に触れるということは、紙に触れるということだ。 草森紳一先生の蔵書整理をやって、一番よかったと思うのは、何千冊にも及ぶ本を、実際に手にとることができた、ということだ。特に、リスト入力の作業では、奥付…
近ごろ、雑誌の付録がアツイらしい。なんでも「女性誌」なるものには、ブランド物の折りたたみ傘やミニバッグ、ビーチサンダルからはてはガーターベルトまでが付録として付いてくるというウワサだ。付録を呼び物として売り上げ部数を伸ばそうと、“付録合戦”…
阪神淡路大震災のとき、ぼくの実家は震度7の地域にあったから、2晩くらいは両親と連絡がとれず、安否もわからなかった。ようやく電話がつながったとき、当時は現役の外科医だった父が、「この3日間、縫いまくった!」と、こちらの心配をよそに興奮しまく…
草森紳一先生の蔵書の間には、いろいろなものが挟まっている。一番多いのは、古書店からの請求書。最初のころは、「支払いはきちんと済んでいるのだろうか」と心配になったものだが、その点は、きっちりされていたようだ。意外なものが、意外な値段だったり…
なんと面妖な!? 古いことばを使って、そう表現してみたくなる事態が、あるものだ。 写真を見て欲しい。右側は、加藤繁著『支那経済史考証 上巻』(東洋文庫、1952)、なにやらむずかしそうな本だが、今回のお話には内容は一切、関係ないからご安心を。左側は…
誤植とは、怖ろしいものである。 どれだけ一生懸命、丁寧に校正をしたつもりでも、誤植はどこかに必ず残ってしまう。できたてほやほやの本を喜び勇んで開いたとたんに、誤植が目に飛び込んでくることも、多いのだ。 どうして気づかなかったんだろう? あれだ…
日本の伝統的な和綴じ本は、基本的に和紙でできているから、強度が低い。持ってみるとふにゃふにゃだし、ちょっとぞんざいに扱っていると、角の部分からめくれ上がってきたりする。 そこで、大事に保存するために「帙(ちつ)」というものを用いる。厚紙に布…
銀座で、女の人と待ち合わせをしたことがある。 待ち合わせ場所には必ず早めに到着する。ぼくはそういうタイプだ。遅れるのがイヤ、というよりは、遅れそうになって落ち着かない気分を味わうのが、イヤなのである。 だから、10分前、15分前に到着することも…
書籍編集者はいつも、担当した本が店頭で平積みになっている風景を夢見ながら、仕事をするものだ。その絵の中では、帯はとても重要な宣伝媒体である。パッと見た瞬間に、「おもしろそうだ!」と脳を刺激して、思わず手にとってあわよくばレジまで持って行き…