崩れた本の山の中から 草森紳一 蔵書整理プロジェクト

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

作業報告

十勝平原再訪記(後編)

本はなんのために存在しているのか? それはもちろん、読まれるためでしょう。どんなにいい素材を使って、美しく仕上げられた本でも、読まれなければ意味がない。別に隅々まで熟読して欲しいというわけではありません。だれかが開いてみて、なにかを感じ取っ…

十勝平原再訪記(前編)

そこでは、時間そのものが凍りついているかのようでした。 子どもたちの笑い声が毎日響いていたのは、もう20年ほども前のことになってしまったそうです。しかし、長い歳月に浸食されたような乱れは微塵も感じられず、かといって、在りし日の姿が昨日のことの…

それだけでニュースになるのだ!

帯広大谷短期大学から、新聞の切り抜きをお送りいただきました。1つは、『十勝毎日新聞』11月11日付夕刊。 音更出身の作家 故草森さんの蔵書 帯広大谷短大に寄贈 公民館に3万冊到着と見出しが付いています。もう1つは、翌日の『北海道新聞』の朝刊。こち…

その朝は、雪。

11月9日、月曜日。晩秋の太陽が傾き、明るい中にもどこかけだるさを感じさせる光に包まれた、午後3時ごろ。 もう1年半近くも、東京都内のとある倉庫に閉じこめられていた蔵書たちは、格安の見積もりをしてくださったとある引っ越し屋さんの4tトラックに…

北の大地へ……

1956(昭和31)年、大学受験のために上京した、一人の青年。それから半世紀以上が過ぎて、彼がその半生をかけて集めた3万冊にも及ぶ蔵書は、故郷に帰ることになりました。 長らく、みなさまにご心配いただいておりました草森紳一先生の蔵書ですが、このたび…

淡い緑の中に

一昨日、昨日と、東海さん、Living Yellow氏、そして円満字の3人で、思い立って草森先生のご実家の書庫を拝見に出かけてまいりました。 日食が見えるか見えないかを気にしつつ、羽田空港を飛び立ったのは午前11時過ぎ。太陽を背に一路北上して、とかち帯広…

第2部、ついに完結。

731箱、3万1618冊。 まだ夏の香りが残る9月の最終週から始まった「草森紳一蔵書整理プロジェクト第2部」も、思いがけない惜春の嵐に見舞われた今週、金曜日5名、土曜日9名(別働隊1名含む)のご参加を得て、ついに完結の時を迎えました。トータル29週…

いよいよあと1週!

昨晩、家へ戻ってきて、早速、USBメモリに移していただいたみなさんの作業ファイルを開いて、集計を始めました。なんとか連休前に入力を終えるべく、今週も「強化週間」を断行。水曜日2名、木曜日1名、金曜日5名、土曜日8名のご参加で、作業は690箱まで…

花は盛りに

今年は例年になく長かった桜の季節も、東京ではとうとう終わろうとしています。みなさん、お花見はいかがでしたか? わが蔵書整理プロジェクトの面々も、昨日、土曜日の晩に飛鳥山公園で遅ればせながらのお花見をいたしました。 今週は、金曜日5名、土曜日…

お花見気分に背を向けて

春爛漫。街を歩くと、入学式に向かうとおぼしきういういしい親子連れや、明らかに入社したばかりの、スーツ姿もどこかぎこちない若者を見かけます。東京の桜も、ようやっと満開。いい季節を迎えました。 そんな中、わが蔵書プロジェクトは、何を思ったか今週…

春の風の色

桜の「開花宣言」とやらが出されると、待ちかまえていたかのように冬将軍が舞い戻ってくる、この季節。 ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ 井伏鱒二の『厄除け詩集』の一節を思い出しながら、少し気合いを入れ直そうと、蔵書整理も「強…

1年が過ぎて

今年の春分の日は、3月20日。本来なら、蔵書整理プロジェクトの作業日にあたる金曜日ですが、祭日ですから、さすがにお休み。いかにも春分の日らしい、うららかな1日を、ゆったりと過ごしました。 草森紳一先生がお亡くなりになられてから、1年が経ちまし…

春宵一刻

今週は、金曜日4名、土曜日3名の参加。入力済みの本は2万1261冊。段ボール箱にして504箱。ついに500箱に到達しました! 記念の500箱目は「マンガ」の箱。土曜日参加の3人で、ささやかながら、喜びを分かち合いました。 この作業に取りかかったのが9月の…

2万冊突破!

金属製の屋根にたたきつける雨粒の音が、建物全体に共鳴して、ゴオッと重く低い響きを立てる。暗くさみしい海の底へ、ゆっくりと沈んでいく潜水艦の中にいるような、金曜日の午後。 かと思えば、くもりガラスの窓から射し込む春の日差しが、何やらものうげだ…

電車の中でも思わず…

ひっそりと静まりかえった作業場。キーボードを叩く音に交じって、時折、ピーッ、ピーッと、何やらかん高い電子音が聞こえてきます。 その音源は、バーコードリーダー。カバーに印刷されているバーコードを読み取ることによって、その本のISBNコードを一瞬で…

残されし者たち

鉄の扉をヨイショっと開けて、鉄の階段をトントンと小気味よく昇る。薄暗い空間に、がらあんと広がるコンクリートの床。ほのかに見える、積み上げられた段ボールと、いくつかの事務机。壁際のスイッチを入れると、パチパチッと蛍光灯のはじける音に続いて、…

浮世離れした日々

あたたかい週末になりましたね。 金曜日は、いわゆる「13日の金曜日」。土曜日は、バレンタインデー。世間では、浮いたり沈んだりのややこしい2日間だったのではないでしょうか。 でも、われらが蔵書整理プロジェクトは、着実に前進。金曜日は4名、土曜日…

梅の香に誘われて

夕方5時。作業を終えて倉庫を出ると、美しい黄昏の空が広がっている。――そんな季節になりました。 2月に入って、ずいぶんと日が長くなってきました。東京地方は相変わらず寒いですが、木枯らしをついて梅の花もちらほらと咲き始め、春が近いことを思わせま…

われらが武器は、キーボード!

今週は、やられましたねえ。 金曜日、土曜日と、東京地方の天気は荒れ放題。降りしきる雨の中を、パソコンかついで倉庫まで出かけるのは、さすがに気力が萎えかけました。特に金曜日。吹きつける雨風の音が、広い倉庫の天井にこだまして、その寒々とした響き…

ホームページオープン!

年始のごあいさつにて予告いたしましたホームページ「白玉楼中の人 草森紳一記念館」を、本日、オープンいたしましたので、お知らせいたします。 草森先生のライフワークであった中国の詩人、李賀が死ぬとき、天帝から「新しく白玉楼という宮殿を建てたので…

中間地点の眺め

お昼過ぎ、いつもの倉庫に到着してみたら、一番乗りなのにエアコンだけは稼働中。どうしたんだろうと思ったら、管理会社の部長さんが気を遣って、朝から暖房を入れておいてくださったのでした。やさしいお心遣い、ありがとうございます。 でも、風貌から判断…

あったかい本が欲しい!

今年最初の目録入力作業を、9日(金)〜10日(土)の2日間、行いました。 金曜日の東京都内は、積雪の予報もあったくらい。冷たい雨が降りしきりました。年末年始の休みですっかり冷え切った倉庫は、ハンパないくらいの低温。エアコンをフル稼働しても寒さ…

291箱にて年内打ち上げ。

年内最後の蔵書目録入力作業。今週は、金曜日3名、土曜日6名の参加で、22箱、約1150冊を済ませました。トータルで291箱、1万1150冊が終わったことになります。残念ながら目標の300箱には届きませんでしたが、ご参加いただいたみなさん、おつかれさまでし…

1万冊の入力完了!

毎週、金曜日と土曜日になると、都内のある倉庫の2階に、どこからともなく、ノートパソコンを抱えた、何やらいわくありげな面々が集まってきます。少ない日は、3、4人。多い日は、7、8人。 そこには、本がぎっしり詰まった段ボール箱が、山のように積ま…

その先は永代橋 白玉楼中の人