崩れた本の山の中から 草森紳一 蔵書整理プロジェクト

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

730回の夜と朝

 草森先生がお亡くなりになってから、まる2年。たった730回、夜と朝との交替を見送ってきただけとは思えない、濃密な時の流れでした。
 夏の花火をともに見上げ、冬の寒さをともにしのいだ蔵書整理プロジェクトの仲間たちも、それぞれの生活へと戻っていきました。あれほどの膨大さでぼくたちを圧倒し続けた段ボールの山も、秋の一日、その巨体を振るわせながら旅立ち、いまは北の大地の片隅で、春の訪れを待っています。
 そして、ぼくはと言えば……。
 かつて担当していた『月刊しにか』という雑誌で草森先生にお願いしていた、「肘後集――明治人の清国見物」という連載を、ようやく、単行本に仕上げることができそうです。『文字の大陸 汚穢の都――明治人清国見聞録』というタイトルで、大修館書店より発売されます。順調にいけば、書店に並ぶのは、15日ごろになるようです。
 そもそもこの連載は、先生がお元気でいらっしゃれば、2008年のうちに本になっていたはずでした。それが、突然の訃報によって中断され、2年の歳月をくぐり抜けてこうして世の中に出ていくわけです。
 昨日、本文を文字校了にして、ようやく、1つの仕事を終えた感じがしました。お世話になった先生に、最低限のお礼だけはできたかなあ、と。
 あとは、1人でも多くの方がこの本を手に取り、草森ワールドをなつかしく楽しんでくださることを祈るのみです。

その先は永代橋 白玉楼中の人