草森先生がお亡くなりになってから、まる2年。たった730回、夜と朝との交替を見送ってきただけとは思えない、濃密な時の流れでした。
夏の花火をともに見上げ、冬の寒さをともにしのいだ蔵書整理プロジェクトの仲間たちも、それぞれの生活へと戻っていきました。あれほどの膨大さでぼくたちを圧倒し続けた段ボールの山も、秋の一日、その巨体を振るわせながら旅立ち、いまは北の大地の片隅で、春の訪れを待っています。
そして、ぼくはと言えば……。
かつて担当していた『月刊しにか』という雑誌で草森先生にお願いしていた、「肘後集――明治人の清国見物」という連載を、ようやく、単行本に仕上げることができそうです。『文字の大陸 汚穢の都――明治人清国見聞録』というタイトルで、大修館書店より発売されます。順調にいけば、書店に並ぶのは、15日ごろになるようです。
そもそもこの連載は、先生がお元気でいらっしゃれば、2008年のうちに本になっていたはずでした。それが、突然の訃報によって中断され、2年の歳月をくぐり抜けてこうして世の中に出ていくわけです。
昨日、本文を文字校了にして、ようやく、1つの仕事を終えた感じがしました。お世話になった先生に、最低限のお礼だけはできたかなあ、と。
あとは、1人でも多くの方がこの本を手に取り、草森ワールドをなつかしく楽しんでくださることを祈るのみです。