週末には、電車を乗り継いで「秘密のアジト」に向かう。
まあ、そんな気分。
そこで、3万冊余りの草森紳一の本たちを見上げ、彼らの運命を考える。
草森文庫創設が見送りとなった11月半ばから、目録の入力作業にブログの打ち合せが加わった。ああでもない、こうでもないと二人組の間では何度メールが行き交ったことか。
そしてとうとう12月7日!、『崩れた本の山の中から 草森紳一蔵書整理プロジェクト』がスタートする。第一日目の宣言文「山にむかいて、目を挙ぐ」(円満字二郎)は、整理に携わったみんなの気持ちも代弁して今も胸を打つ。
ブログの開始とともに、行き場を失った本たちは一冊、一冊、ていねいに写真に撮られ、ネット上で紹介されることになった。
触るだけでばらばらになりそうな明治の小説、思わず声を上げたモダンな装丁の詩集、付箋だらけではちきれそうな本も沢山あれば、波線や囲みのチェックは漢籍に至るまでどの本にも見られ、よくぞここまで勉強なさった(草森さん、失礼!)と驚くばかり。
ほとんどの本は出自を入力されるや再びダンボール箱の中に。運よく入力者の目に留まった本は、中身を吟味されたうえでネット上のステージに立つ。そんな幸運な本はとてもわずかだ。もっともっと紹介できれば、どんなにおもしろいだろうと思うものの、残念ながらそんな余裕もない。
このとき我がプロジェクトでは、週末の入力、ほぼ毎日更新のブログ、そして他のグループの企画による3月の展覧会を見据えて、草森紳一HPの準備までが深く進行していたのだ。
2008年も残りわずかとなった12月25日のクリスマスの夜、「蔵書整理プロジェクト関係者のみなさま——こんな折に無粋とは存じますが……」のメールが。それはなんと円満字管理人からの「今年の成果、1万10000冊のエクセルファイル」のプレゼントだった。
予期しない出来事に翻弄された年は去っていった。新しい年、2009年の1月初め、草森紳一展覧会が見送りになる。しかし今回は落胆しない。手は休めず、着々と実績を積むのみ。
そして……なんというスピード! 1月25日、『白玉楼中の人 草森紳一記念館』(草森紳一HP)がオープン。ほとんど知られていなかった草森さんの詳細な経歴はもとより、単行本未収録原稿や、全著作リストの一冊一冊には目次までもが〜〜!
さあ、あとは目録の入力をもうひとふんばり。