当方が、幼い頃、ふと見つけた、表紙もはずれかけた、古びた世界史年表は、ちょっとした宝物になった。なにより気に入ったのが、日本、東洋、西洋(欧米)、中近東の各時代を横に眺めることだった。
例えば、のっぺりとした空白の中に「弥生時代」とぽつんと記されただけの、日本の欄から、目をすべらせていく。西洋はもう忙しそうだ。ペリクレス、ペロポネソス戦争、そしてアレクサンダー大王。東洋もよく分からないが戦国時代、だそうでドタバタと慌ただしい。中近東も、アッシリア、アケメネス、ササン。とめくるめく。
マラトンの戦いあたりで、西洋と中近東の欄が。同じ文字で綴られ、ぶつかっていたのか。まさに波瀾万丈。それでも日本は、やっぱり、真っ白で、弥生時代。なんとなく心細くなって、おいおい、がんばれよ〜日本、と思いつつも。それはそれは呑気でよかったのかもなあ、などなど、と断片的な文字面のみから、勝手極まりない「歴史観」をぐんぐん、やしなってしまい、現在に至る。
書き込みはほとんどない。日本と大陸諸王朝の元号・干支が並べられた、年代表の数字に傍線や囲みが付されているくらいだ。
一番遠い年代では、前漢の文帝の14年(西暦にして166年)、1965年当時から逆算して2130年前という表示に下線が引かれていた。
一番最近の年代で、丸で囲まれているのが、昭和25年であった。当時から見て15年前、今からは59年前。
「本書」収載の年表で、探りを入れてみる。
西洋史、の欄 「1950 シューマンプラン発表」
東洋史、の欄 「1950 [朝鮮]朝鮮動乱起る」
日本史、の欄 「1950 朝鮮動乱起る」。
それぞれ、細かい文字のぎっしり詰まった、隣り合ったニつの欄に、ほぼ同じ文字、が印刷され。片方は太字、であった。