崩れた本の山の中から 草森紳一 蔵書整理プロジェクト

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

都。

 昔々、中高生の多くには、買う、買わないはともかく。マンガ以外にも、お気に入りの雑誌があったものだ。大人の方々からみたら十把一絡げで、後には「おたく」などと称されることになる、各ジャンルの中にも、それぞれライバル関係の雑誌たちがあった。男子ファッション誌は『POPEYE』(マガジンハウス)か『ホットドックプレス』(講談社)、アニメ誌なら『OUT』(みのり書房)か『アニメック』(ラポート)、ロックだったら『Rockin'on』(ロッキング・オン)か『フールズメイト』(フールズメイト)。そして、その中で群を抜いて、小さく(A5判)、安く(250円)、ページ数が多く、サブカルチャー全般をフォローしていたのが『宝島』(JICC出版局)であった。この『宝島』、たぶん当時住んでいた町の、最寄りの書店には当初、3部しかおいてなく。後にその3人全員と関わることになった筈だ。 
 そして家では。ラジカセで、「エア・チェック」に勤しむのだ。
 大滝詠一氏の『ニューミュージックフォーラム』(スピーチバルーン)、NHKFMの看板音楽番組『サウンド・ストリート』、あるいは眠い目をこすりながら、『ビートたけしオールナイトニッポン』を録音していたのだから、暇だったのか、忙しかったのか、訳が分からない。
 でも。全ては東京から流れてきた。東京には何かがとうとうと湧いているはずだった。
 草森紳一、氏の御蔵書中の本書『東京ガールズブラボー』(岡崎京子先生、宝島社、1993年)に登場する、「少年少女」たちもまた、そんな、本当は実体などどこにもなかった「サブカルチャー」の都、東京を追い求める。大都市、札幌から上京してきて、なぜか巣鴨、に下宿することになった主人公、サカエさんの大冒険がはじまるのだ。
 下記、初めて、原宿は、ラフォーレに入った、サカエさんの言である。(本書、上巻、p.47)

 

 <カンタンに モノがあるけど カンタンに手に入んないし
 でも、これみよがしに みせつけられたら どうしていいか わかんなくナル>

 さて、『サウンド・ストリート』、先週3月2日(月)から平日深夜零時より、NHKFMで当時の音源を各DJの方々毎に、毎週、週替わりで限定再放送中である。今週は「キョージュ」坂本龍一氏の音源!奇しくも、今日は火曜日!「青春ラジカセ」で是非ご検索を。


 

その先は永代橋 白玉楼中の人