当然、あの名曲が入っているはず、と思って買ったのに、しっかりとその曲だけは抜け落ちているということがある。T.REXであれば『20世紀少年』がないあのDVD、とか田原俊彦なら『抱きしめてTonight』(『教師びんびん物語』主題歌)が収録されていない、このCD2枚組とか。しかしかえってその曲が、半ばくっきりと思い浮かんでよけい、切ないのだ。ああ、もっと、もっと。
マンガの再刊、文庫化も同様である。土田世紀の『高』(たか)(講談社)など、是非再刊してほしい作品だ。マーケット・プレイスなどあるところにはあるが。普通の書店でもういちど手にとってみたい。
おそらく、彼の商業誌デビューから2、3年以内だったのだろう。
友人の四畳半で半ば押しつけられて読んだ、『モーニング』(講談社)の後ろの方に『高』はいた。作品世界と物語は一見、『仁義なき戦い』の一ファンにはありきたりに思えたが。画力と殺気が全然違う。手抜きのない大ゴマで描かれる登場人物の表情、そして立ち姿の凛々しさと美しさに打たれていると、友人が嬉しそうに煙草を吹かして、こう言った。
「この年齢で。凄いよ」
ただうなずくしかなかった。
北島三郎氏にも協力を得た『俺節』を『ビックコミックスピリッツ』(小学館)連載開始後、十数年、あの『編集王』、『同じ月を見ている』などヒット作品を描き続けながらも、彼の作品からはあの最初出会った、身の引き締まる殺気が消えることはない。
ある日、新古書店のシールを背中に背負って。御蔵書の中からひときわ「ギラリ」とにらみつけてきた本書。『ビッグコミックスペリオール』(小学館)連載、2003年2月1日初版のこの『ギラギラ』。2008年、佐々木蔵之介主演でTVドラマ化された。そちらをご覧の方もいらっしゃるだろう。
夜の六本木。ホストクラブ『リンク』。香水、シャンパン、札束。
『夜王』、『黒い太陽』に刺激されての、TVドラマ化、とはいえ、『ギラギラ』はそれに耐えた作品であったようだ。
「高」から「公平」へ、住む世界こそ違うが、しっかり「殺気の系譜」は引き継がれていた。
人間、殺気の匂いが必要だ。
女の香り。マリリン・モンローの寝間着ともなったシャネルの香りとその殺気の匂いが混じり合う醍醐味を本書では存分に味わうことができる。
人間、勇気も必要だ。
そんな殺気と勇気の強い匂いを漂わせて、今日、この言葉を生まれてはじめて口にした。
「Perfumeのベスト盤ありますか?」
そして、沈黙の内に帰宅し、封を切った。
「あ。『ポリリズム』入ってない」
しかたがない。ピースをくわえた。
小学生向けえほん『COCO(ココ)はとびきりかわったコ』(BK1書評ポータルに拙文投稿済)を、自分に読み聞かせしながら。
紅白の始まりを待つことにする。
今日は、のっち。どんな衣装だろ。