『機動戦士ガンダム』の後番組として放送されたテレビアニメ『無敵ロボ トライダーG7』(1980〜81)は、なかなか忘れがたい味を持った作品だった。
巨大ロボット、トライダーG7を操って、あらゆる依頼に応える社員5人の零細企業、竹尾ゼネラルカンパニー。社長の急逝により、ただ1人、トライダーを操縦できる人物となった小学6年生の息子、竹尾ワッ太が社長に就任するところから、物語は始まる。当時、新聞で、「社長になりたい!」という小学生の夢をかなえる番組、といった紹介がなされていた記憶がある。
時は戦後まもなく。和歌山市とおぼしき地方都市を代表する企業、社員200名の南海産業は、GHQによる公職追放によって重役たちを失ってしまう。そこで、総務部長から急遽、社長に昇格したのが、桑原さんなのだ。本来は社長になれるはずもなかった「三等重役」だと陰口をたたかれつつも、桑原さんの活躍が始まる。
1951(昭和26)年から翌年にかけて『サンデー毎日』に連載され、ベストセラーとなった本書で描かれるのは、ほのぼのとした社内恋愛と、その仲人をするのが大好きな社長という、まことに家庭的な企業。これが、源氏鶏太お得意のユーモラスな「サラリーマン小説」の世界なのだろう。
そんなサラリーマン社会が、かつてはあったんだろうなあ。そう思いながら、ふと奥付を見て、びっくりした。草森先生の蔵書にあったこの本は、1988(昭和63)年の43刷。カバーの袖には、新潮文庫に収録された源氏鶏太の作品が23作もズラリと並ぶ。ぼくが社会人になる3年前、この本に書かれた世界はまだまだ現役だったのか?
日本書籍出版協会『日本書籍総目録』で調べてみると、1992(平成4)年に72作が流通していた源氏鶏太の作品は、3年後には17作に激減している。現在では『三等重役』も絶版だ。
それは、1985(昭和60)年に亡くなった源氏鶏太の文学的な寿命の限界を意味しているのか? それとも、バブル崩壊後の数年間に、日本の社会がいかに変貌を遂げたかを示しているのだろうか?
そうして、その時代を、あの竹尾ゼネラルカンパニーは、うまく乗り越えられたのだろうか。