崩れた本の山の中から 草森紳一 蔵書整理プロジェクト

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

「最後の文人」草森紳一は、2008年3月東京の自宅マンションで急逝しました。自室に遺されたのは山と積まれた3万冊余りの本たち。このブログでは、蔵書のその後をお伝えします。

残されし者たち

 鉄の扉をヨイショっと開けて、鉄の階段をトントンと小気味よく昇る。薄暗い空間に、がらあんと広がるコンクリートの床。ほのかに見える、積み上げられた段ボールと、いくつかの事務机。壁際のスイッチを入れると、パチパチッと蛍光灯のはじける音に続いて、エアコンがブーンとうなりを上げる。寒々とした空間に、急に生気が戻って来ます。
 2月も後半に入って、ときおり、妙にあたたかい日があるからか、わがプロジェクトの作業場も、底冷えがすることはなくなって来ました。エアコンをつけて小一時間もすると、指先がかじかむような寒さは、遠のいてしまいます。夕方5時、作業を終えて外へ出たときの明るさとともに、季節のうつろいを感じます。
 今週は、金曜日5名、土曜日7名のご参加をいただき、440箱に到達。入力を終えた冊数は、1万8450となりました。
 土曜日、段ボール置き場を整理して、作業を終えたものとこれからのものをきちんと分けてみたところ、やはり、全体の3分の2を少し超えたあたりまで来ているようです。ただ、残っている段ボールは、みなさんがなんとなく後回しにして来ているだけあって、中国語の原書や、江戸・明治の歴史物、大型の美術書など、見るからに難物が多そう。気を引き締めて、進まなくては!
 ところで、「十蘭にはペダンチシズムの魅力がある」と、草森先生も愛読していらした小説家、久生十蘭の没後50年記念出版、『定本久生十蘭全集』(全11巻、国書刊行会)の刊行が、昨年秋より始まっています。今月、第2巻が発売されたところ。詳しくは、国書刊行会のホームページへどうぞ。

その先は永代橋 白玉楼中の人