生きたいように生きるとはどういうことなのだろう。
蔵書の山を眺めながら、またも考える。
自分の本能に忠実に、動物のように自由に生きるとしても、動物にも動物世界の掟があるはずだ。それをどうやってうまくやりすごすか! 我を通すか。
桁外れの(まだまだこの言葉では足りないけれど)感受性と好奇心と才能を持って生まれた草森さんの一生は、その闘いの連続だったのではないかと思う。40年近く文筆だけの綱渡り生活を続け、一人で暮らした。「女は敵よ」「編集者は敵よ」という言葉を何度も聞いた。生まれて初めて標的となった敵は、いったい何だったのだろう。もちろん社会の制度や世間は我慢できない大敵であって、いくども負けそうになったに違いないが、結局最後まで自分を貫いた。
このように書くと頑固一徹にみえるけれど、一種チャランポランを武器にして、軽やかに、そして命がけに生きただけなのだ。
倉庫に積まれた箱の中には、幼い頃から変人と言われ続けた草森さんが興味をもった奇人変人の本もある。著名な芸術家となった人物はのぞいても約30冊(実家の書庫にはもっとあるに違いない)。鷲尾義直『名人奇人珍談逸話』(一誠社、1922)、村上信『かはりもの』(明文館、1925)、岡部他家夫『諸国畸人伝』(桃源社、1962)、石川桂郎『風狂列伝』(角川書店、1973)、三好徹『へんくつ一代』(講談社文庫、1993)、式場隆三郎『二笑亭奇譚』(求龍堂、1989)等など。
一番のお気に入りはだれですかと、訊いてみたかった。